ホーム > 吃音(どもり)と 
 
      ■ 目 次
 1.吃音(どもり)とは
 2.吃音症になる原因と要因
 3.吃音の治療・改善法
 4.誰にも共通した吃音改善とは

 

吃音(どもり)とは

ことばが詰まることを「吃音」、あるいは「どもり」と言います。今は「どもり」という言葉は差別語となっていますので、徐々に使われなくなっている傾向にあります。

吃音の症状とはどのようなものなのでしょうか。詳しくは「吃音診断チェック」をご覧ください。ここでは簡単に吃音の特徴を説明いたします。


■話し方では:
■随伴行動(体の動き)がある

言おうとするとき、手足をふる、指をクロスさせる、体ののけぞらす、足で床をトンと踏む・・・などの体の動きを伴うことがあります。体を動かしたり、体の一部に力みを入れると弾みがついて話しやすくする作用がありますが、常習化すると癖として定着してしまい、社会生活で不自然な動きとなります。


■心理面で発語予期不安がある
           不安のある女性

吃音を繰り返す、ある場面でことばが詰まることを繰り返すと、話すことの恐怖心が生じ、言えないのではないかという予期不安が生まれます。発語予期不安(吃音意識)は吃音者特有の心理で、“滑舌が悪い”という類とは異なります。

吃音意識(発語予期不安)がある吃音と、本人が心理的負担がなく吃音を出して話す場合(幼児に多い)など、精神的負担で大きな違いがあります。


幼児・子どもは自意識(他人が自分をどう見るかの意識)が未発達なので発語予期不安などの吃音意識がない“仮性吃音”と言えます。小学校高学年以上になると吃音意識が芽生えて“真性吃音”に移っていきます。

■ことばを言い換えることが多くなる

言い難ければ、同じ意味のことばに換えて話そうとします。この回避の心理の“言い換え”は都合が良いのですが、頻繁に使うようになると、絶えず言いやすいことばを意識して選んでいくことになります。


吃音の発症経緯によって分類することができます。

■発達性吃音(吃音数全体の約9割を占める)

■獲得性吃音(吃音者数全体の約1割)


吃音症になる原因と要因

なぜ吃音になるのか?その原因を探る研究は長きに渡ってなされ、さまざまな説がありますが、未だ特定することは無理があるようです。一方、吃音症の引き金となる“要因”はさまざまあります。“原因”と“要因“とは解釈が異なります。


■脳機能の障害によって吃音症が発症するという(原因)説。
                 吃音と脳の関係

大脳の左右の半球の働き方のバランスが崩れて吃音症状が出るという説です。
人間の大脳半球は、左右半球のいずれかが他方の半球に働きかけています。この働きかけ方が安定していないときに吃音が起こるというものです。

吃音者と非吃音者の脳をMRIで検査すると、非吃音者は話すときに左脳が優位に活動し、吃音者は右脳が活発に活動することが認められています。吃音者は脳の左右の言語に関係する運動脳野などの機能分化がはっきりせず、言語と舌の動きなどの非言語の両方の脳運動の協調性が低下していて、話そうとしたり、話すことを止めたりする脳の部位の活動がはっきりしていないのが、吃音者の脳の動きの特徴ととらえています。


■脳の代謝物質の影響を受けて吃音症状がでるという(原因)説

            吃音とドーパミンの関係

吃音症状が出ているときは脳がドーパミンを過剰に分泌しているというものです。ドーパミンは人を興奮させる脳内物質です。同じ脳内物質のセロトニンによってバランスを保っているのですが、セロトニンが上手く分泌されないとドーパミンをコントロールできなくなってしまいます。セロトニンはストレスなどの影響で分泌量が減ってしまうことがあります。


■遺伝で吃音になるという(原因)説

            吃音の関係遺伝子    

吃音の遺伝子があり、部分的には吃音の遺伝子が吃音症の原因であるという説です。カメルーンのある家族の親族を調べたところ大人106人の内48人が吃音でした。アメリカの研究チームは、このことは何か遺伝性があるのではないかと推測し、この家族の遺伝子を調べて、2006年に染色体のある部分に関連遺伝子を見つけました。

一方、別の生物学的研究では、吃音はその家系に伝わる習慣や生活様式、教育、しつけなどの社会的、環境的な要因の影響を受け、関連遺伝子もそれらの要因によって変化するととらえられるので、吃音は必ずしも遺伝するとは言えないとする見解も当然あります。今のところ遺伝が原因と断定できる根拠は薄いようです。


■心理的なストレスで吃音になるという(要因)説

           ストレスを抱える男性

これは実際に明らかなことですので、吃音の原因というより要因 - 吃音の引き金になるもの - と言うのが適切でしょう。話し方を指摘されて、話すことに神経質ってしまった。たまたまどもったら皆に笑われた。「ありがとうございます」が一度詰まったら、不安になって言いにくくなったなど、社会生活・人間関係の中で発症する吃音(意識)です。


■神経症が吃音の原因ととらえる説

自己認識が不確実な人格構造、情緒的な障害を持つ神経症により吃音症になるという説です。
吃音者の人格に共通する特徴的なパターンがあるのか、情緒的に共通した問題があるのかなどについて多くの研究がされてきましたが、吃音者に共通した特徴パターンを見いだすことはありませんでした。

吃音があるので話すことに神経質になり、その結果、対人恐怖などの神経症の症状が表れることはあります。

また吃音者の一部にはSAD(社会不安障害)などの神経症の症状を持つ人、精神病理に起因しているととらえるのが妥当と思われる人もいます。(獲得性吃音)


■環境による(要因)説。

            悩んでいる女の子

子どもが話し方を習得していく段階で、早口な両親との会話など、さまざまな人との会話で吃音を出すようになることがあります。吃音の友達がいて、その話し方のまねをしていたら、その発語感覚を覚えてしまうことも含まれます。親が吃音で、その話し方を感じ取って同じような話し方になる、学校や社会でのストレスの強い環境のために吃音になるということも考えられます。


■脳卒中などの脳疾患が原因

脳疾患などの原因がはっきり判る吃音を、獲得性吃音といいます。




吃音の治療・改善法

さまざまな方法で吃音の治療・改善の試みがなされています。


            吃音の治療をする女性

言語聴覚士による診断・治療
脳疾患、その他、体の外傷に起因する吃音(獲得性吃音)の治療に適しています。発語神経を修復する話すためのリハビリ的な治療。

心療内科・精神科・神経内科での受診
過度なストレスにより吃音がひどくなっている場合、緊張をほぐすための精神安定剤などの服用の処置を行います。

民間の吃音矯正所
吃音矯正所で行われている対症療法では、さまざまな手法があります。

◎ディストラクション(Distraction)法
注意転換法ともいわれ言いやすくするための手法。

これらの手法はある期間はそれなりの効を奏することもあるが、慣れてしまうと元に戻ってしまうことが多いという問題があります。結果として吃音そのものは改善されず、不自然な話し方、動作が習慣として残ってしまうことになります。


◎腹式呼吸:
吃音者は浅い胸呼吸をして話すことが多いので、横隔膜の動きをともなう腹式呼吸の習慣は吃音を減らすことにつながります。話すことを職業としているアナウンサーは腹式呼吸を自然に使っています。
腹式呼吸をすれば吃音が出ないということではありませんが、腹式呼吸の習得は発語の安定感に繋がる要素のひとつと言えましょう。


◎正しい息継ぎ
吃音者は小刻みな息継ぎが見られます。ことばのまとまりで息継ぎをする自然な息継ぎは大切です。


◎朗読練習、緩やかに話す
早口の吃音者は緩やかな速度の朗読、話し方の習得が求められています。


一般の話し方教室
軽度の吃音者であるなら、受容的な雰囲気の中で人前で話す経験は、話す自信につながります。基本的に正しい発声の指導を受けるので、吃音の出にくい発語感覚を掴むきっかけにもなり得ます。


吃音症の治療・矯正のために採り入れられている療法

◎行動療法
「人間の行動は、後天的条件付けの結果であり、ふたたび学習する事によって、性格や行動の変容が可能である」ととらえます。行動療法の中の、脱感作法、自立訓練法などが、吃音矯正に使われています。

「脱感作法」(敏感でなくなる作法の意味)では、話す緊張の度合いの低い場面から、徐々に緊張する場面で話す段階に上げていきます。

「自律練法」では、身体をリラックスさせることと、イメージトレーニングを併せて気持ちを和らげる訓練をします。

論理療法
吃音を持っている自分をどのように受け止めていくか。今持っている自分の考え方、吃音の受け止め方が論理的なのか、それとも非論理的なのかを考え、柔軟的な受け止め方を育てていく療法です。

◎言語聴覚療法
聴覚フィードバック装置を使った治療法。吃音者が、瞬時ずらした自分の声を聞きながら話すと、話しやすくなるという効果を利用したもの。これが吃音治療の効果を出しているかについては疑問視される面もあります。



誰にも共通した吃音改善とは

吃音の症状が人によって異なるように、改善の過程も一様ではありません。吃音の画一的な矯正方法は今のところまとめられていないのが現状だと思います。

けれど吃音改善への共通した方向性はあると思います。心のケアーと身体反応のケアーという両輪の輪が回っていくことにより、トータルに進むと解釈できます。

 心のケアーで扱う内容


            手と青空  
           

吃音体験のトラウマ(心の傷) ・幼児体験 ・話すことの不安、恐怖 ・対人関係 ・家族関係・セルフ・イメージ ・吃音の受け止め方 ・人生観 ・気質、性格、その他。

このような事柄の心の整理をしていく過程で、今の自分、置かれた環境を肯定的に受け止めていく思考習慣が養われていく必要があります。プラス思考はそのまま具体的なイメージトレーニングの実践に結びつきます。

イメージトレーニングは日常のさまざまな場で活用できます。たとえば、司会のリハーサルの時に全神経を集中してあたかも本番そのものの気持でやりますと、本番で会衆を前にして話す時、気後れする度合いが少なくなります。良いイメージを脳裏に植え付けているからです。

心に描くイメージは良くも悪くも現実に影響するものです。

 身体反応のケアー



            スピーチをする女性
            
               

具体的には、身体のマイナス反応を弱めていくことです。楽な発語のために腹式呼吸とか声帯を締め付けない正しい姿勢とかを無意識にできるまで習慣化していきます。

朗読練習、リズム・抑揚練習、口の動かし方、少しリズミカルに体を動かすことなども体の緊張をほぐす効果につながっていきます。

心と体は別個のものではなく、深くつながり影響しあっています。心のケアーで柔軟性を育み、身体反応のケアーでリラックス感覚を養いつつ良い発語感覚を日常会話で実践していけば、話をすることのプラス体験を多く持つことにつながるでしょう。吃音改善の方向はこの線上にあると思います。