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カウンセリング&レッスン 体験談(30~39歳)(P.12) 名前、社名を言うのが楽に、正しい話し方の習慣、他


 人に名前を聞かれた時、即座に言えない、どもってしまう。詰まることが繰り返されると、苦手意識が深まります。

■名前が言えない、どもる 理由(1)言う時のタイミングが要求される。
名前を言うのは瞬時のことです。考えて言うものではありません。瞬時に言うことが発語の硬さになってしまします。

■名前が言えない、どもる 理由(2)言い換えができない。
名前だけでなく、会社名などの固有名詞は言い換えられませんので、吃音意識があると詰まりやすくなります。

■名前が言えない、どもる 理由(3)早く言おうとしてしまう。
詰まることを繰り返すと、ますます早く言おうとしますので、発語(名前)が硬くなってしまいます。

■名前が言えない、どもる 理由(4)相手が注意して聞こうとする場面が多い。
名前を言う場面は、他者が自分の名前を聞こうとしていることが多いです。自分の話し方に意識が入り詰まることがあります。

日頃からリズム感をもたせた名前の言い方を習慣として、定着させていくことをお勧めします。



「話しやすい言い方を意識して調節していきたいと思います。」
Yさん(山口県在住 30歳 看護学生 女性)
「34年間の悪い癖をじっくりと改善していくつもりです。」
Aさん(東京都在住 38歳 会社員 男性)
「心地よい経験を積みながら改善に向かっている確信があります。」
Nさん(大阪府在住 33歳 会社員 男性)



(名前でどもる レッスン体験①)

 話しやすい言い方を意識して調節していきたいと思います。

Yさん(山口県在住 30歳 看護学生 女性)

私がことばが詰まることを意識し始めたのはたぶん小学校の高学年位からだったと思います。たぶん、それ以前からあったと思いますが、あまり意識していませんでした。家族や友達との日常会話では、言いづらい言葉がありましたが、上手に?言い換えをして生活してきました。

でもやっぱり自然に人前で話すことができないことがコンプレックスになっていて、「もっと普通に話すことができたら、私はもっと積極的に何事にもチャレンジできるのに・・・」と落ち込んでしまうこともしょっちゅうでした。勉強はまずまずできた方だと思うけど、自分からすすんで発表することはなくはなく、いつも控えめに引っ込んでいました。

大学を卒業しクレジットカード会社に就職してから、吃音ですごく悩むようになってきました。業務の電話応対で、お客様の名前、担当者の名前が詰まって言えないことがありました。他の内容は言い換えによってカバーすることができますが、人の名前は言い換えできません。なかなか言葉が出なくて、「もしもし、もしもし・・・聞こえませんが・・・」と相手から言われると余計に焦ってしまって言葉が出なくなることもしょっちゅうでした。そんな失敗があるとますます電話恐怖症になってしまって、仕事に行くのもつらくなりました。

それでも自分で電話に出る前に深呼吸をしたりリラックスするよう心掛けたり、前向きに考えようと気持ちを切り替えたりして、頑張って6年間勤務しました。

そして色々転機があって、今は看護学校に行っています。来年の2月に国家試験を受けます。学校生活はクラスメートはもちろん年下ばかりで、クラスのなかで発表したり、実習先の病棟で発言する機会が多くあります。年下の前では恥ずかしい思いはしたくない…という気持ちも手伝って、人前で話すことに余計に緊張してしまって、発表の時、声が出なくなってしまいました。看護師になっても患者さんの名前を電話で呼んだり申し送りをしたりと、話す機会は多くあります。

もうこれ以上、吃音で落ち込むことは嫌だと思って、吃音関係のことをさがしていると「さわやかカウンセリング」のHPを見つけました。思い悩んでばかりいるより、克服できるよう自分なりに頑張ってみようと思って、レッスンを受けることにしました。

レッスンを重ねていく中で、吃音を治そうとするのではなく、はじめの言葉を伸ばし感覚で言ったり、自分で呼吸を意識して調節することで、以前と比べて少し話しやすくなってきたように思います。今まで言いづらかった名前やフレーズが、調節することを少し意識することでスムーズに出るようになってくると自信になってきて、「どもるかもしれない」という恐怖感も軽減しているように思います。

話しやすい言い方を意識して調節していきたいと思います。

※江田よりのコメント:
クレジット会社の仕事を辞めて、看護師として医療関係の仕事をするという方向転換は大きな決断だったと思います。医療の場では言葉によるコミュニケーションは大きな部分を占めることでしょう。これを機会に更に話すことに自信をつけていってください。




(名前でどもる レッスン体験②)

 34年間の悪い癖をじっくりと改善していくつもりです。

Aさん(東京都在住 38歳 会社員 男性)

初めまして。私は38歳の、そこそこ年齢を重ねた男子であります。私は約34年の吃音歴があり。物心ついた時から「ちょっと言葉が話しづらいな。」と思いつつ、様々な努力をしたものの、気づけば38歳の立派な社会人になっておりました。

私の吃音はいわゆる「難発性」と言われるもので、最初の言葉が出にくい(出ない)というものです。別の表現をすればある場面では「どもることさえも出来ない。」という、なかなかやっかいな吃音です。
でも、言葉が上手く話せなくても、明るい心があれば充分人生は楽しく、そこそこ順調に過ごせるものだと思っております。

振り返れば、学生時代の日直の号令に始まり、朗読、発表、自己紹介、電話連絡を始め、社会人の名刺交換・自己紹介、社名・名前を名のっての電話での交渉・依頼等、生きて行くには言葉を話すことが必須であり、それが出来ず、結構辛い日々を送ってきました。時には言葉を話さなくて済む生き方を考えたりもしました。皆さんもお解りの心境です。しかし人生苦あれば楽あり、吃音で苦しんだ分、自分の努力の賜物でそれらを超えるくらいの楽しいこともありました。正直、吃音を感じながらも、結構自分の人生に満足しているのも事実です。

しかし、子供の頃から常に思い続けていたことは、「もっと楽に言葉が話せれば、今以上に人生も楽しくなるのにな。」そして、「完全に治りたいとまでは高望みしないものの、今以上に楽に話せるようになりたい。ただ普通に電話で会話が出来るだけでいいんだ。」ということでした。

私の日常会話の吃音レベルは「中の下」くらいではないでしょうか。しかし、日常会話を超えて一瞬でも緊張する時があれば、「中の下」から完全な「吃音者」に様変わりしてしまいます。やはり吃音は精神的な要素が含まれるのでしょうか、自分との戦いですね。ちなみに私はお酒を飲むと、通常に話せるようです。周りからそう言われるので多分間違いありません。緊張は誰でもするものであり、緊張した中でどのように上手に言葉を発するか、コントロールするかが重要なのだと思います。

この電話でのレッスンをし始めて、早8ヶ月が経とうとしております。日々の発言を行う時に以前と比べれば、多少コントロールできるようになったことを実感します。余裕が持てるようになったのでしょうか。

例えば10人の緊迫した会議で発言をしなければいけない時に、「レッスンでは最初の言葉を伸ばしてたよな。伸ばしすぎもおかしいので、ちょっとだけ伸ばすのを試してみようかな。」なんてことを考えることが出来るようになったということです。)

ところで人間38歳にもなれば会社でもそれ相応の役職に就き、それに応じた事を話さなければならなくなります。実際それらを避けて通ることは出来ず、また男として克服しなければなりません。

私の社では毎週「経営会議」というものがあり、各部の長が毎週業務の報告を行わなければなりません。おまけに報告の順序が決まっているものですから、それはもう、死刑台の絞首刑の順番待ちのようであり、いつも心臓バクバクです。しかし時とは無情なもの、順番がくれば偉い人たちを前にして、堅い話を報告せざるを得ません。当然、そんな状況ではロクな報告をすることなど出来ず、いつも自己評価は100点満点中、40点程度でありました。いつも会議終了後は自己嫌悪の嵐であります。

しかし、レッスンを始めてからは緊張に耐えながら「言葉の最初を微妙に伸ばすんだっけ・・。」なんて頭の中が真っ白になりながらも「こんな緊張の場で言えるわけないじゃん。逃げ出したいよー。なんて逃げれるわけないじゃん。どうせ言えないのなら、この場を借りて伸ばすのを試してみよう!!」なんて自問自答しながら最初の言葉を伸ばすのを実践してみると・・・「ありゃりゃ、かなりの緊張なのにいつもより逆にいんじゃないか?」なんてことを感じながらいつもよりは順調に話せる時を感じられるようになりました。

やはり私にとって最初の言葉を伸ばすのは有効であり、ちょっとでも言えると自信がつき、絶体絶命の時でもそこそこ無難に言えたりするものだと、最近実感しているのです。

そんな私にも娘が生まれ、そろそろ言葉を話し始める時期になっています。今までの私の涙の出るような苦労を「この子だけには味あわせたくない。」と思い、遅まきながらレッスンと日々の実践を重ねている次第です。ことばの詰まる仕組みは自己流ですが一通り理解できているつもりです。あとは知識に実践を加えるだけ。34年間の悪い癖をじっくりと改善していくつもりです。

自分の心がけとしては、
   ・緊張しながらもリラックスを心がける。
   ・最初の言葉を伸ばす。(直前に息を止めない・吸わない。)
この単純なことを極力実践していくつもりです。

実は中学生の頃から「最初の言葉を伸ばすのが有効」なんてことは知っていました。しかし、実践しようと思ってもなかなか難しいです。自分の発音は少しちがうのだから、かなり意識しないと癖は治らないのだと思っております。

みなさんはちゃんと息を吐きながら言葉を言っていますか?私は話し出す直前に息を吸って止めてしまう癖があるようです。また、中学の時に「おまえ、息を吸いながら話してんだから、しゃべれる訳ないじゃん。」なんて言われたことがあります。恥ずかしさとショックと驚きの出来事でした。

最後に一つだけ言わせてください。
私は今まで38年間生きていて、身近に吃音の人に出会ったことがありません。ちょっと同じ匂いのする人には出会いましたが、それでもちょっと気になる程度であり、明らかに自分よりは上手く話しているように感じました。今まで自分だけが全世界の中で苦労していると思っていましたが、他にも結構いらっしゃるようですね。同じ境遇、そして同じ苦労をした人がいると思うとちょっと安心、そしてちょっと勇気が沸いてきます。

そしてもし、私以上に悩んでいる人がいたら、34年間苦労している私を想像してちょっとだけ勇気を持ってください。ことばが詰まることを、恨んだり悲しく思ったりするのはやめましょう。自分たちが苦しんだ分だけ、私たちは人に優しく出来る良い人間なはずです。その良い自分を維持しながら、さまざまな場面でことばを言い表す能力を高めていけるのですから、チャレンジしていきましょう。

※江田よりのコメント:
営業の仕事をバリバリこなしているAさんですが、電話のレッスンを受けるにあたって、忙しい合間にどこから電話するかが問題でした。そして考えたのが、カラオケボックスからの電話。志あれば道ありです。




(名前でどもる レッスン体験③)

 心地よい経験を積みながら改善に向かっている確信があります。

Nさん(大阪府在住 33歳 会社員 男性)

僕の吃音歴は3~5歳くらいの幼児期と中学3年生から現在(33歳)までです。5歳から中学2年生までは、喋るのにつまったり辛い思いをしたということはありませんでした。(多分、今思うと幼すぎてあまり気にしてなかったことと、当時の僕としては外的刺激が強い緊張する場面が少なかったからではないかと思います。)

中学3年生からは一定の言葉に言いにくさを感じるようになり、思春期で人の目を気にする傾向が強まったせいか、ことばの引っかかりは悪化していく一方でした。高校、大学の頃は将来にすごく不安を感じていたのを今でも覚えています。それからは「電話で名前が言えない・・・、”ありがとうございます”が詰まる・・・、初対面の人と話すのに言葉が出てこない・・・、会社の朝礼で司会をする時など言葉が出にくい・・・」など、吃音を持つ人が経験する辛いことや苦しいことは一通り経験してきたつもりです。

「さわやかカウンセリング」のレッスンを2~4週間に1回のペースで受けさせて頂いてもう10ヶ月になります。先生とのカウンセリングではだいたい「レッスンでは安定した語りですよ。」と言ってもらえます。ですが自分としてはカウンセリングで学んだことをどう実生活で刷り込んだらよいのかわかりませんでした。これが一番の大きな悩みでした。

         ですが・・・一週間前、僕に奇跡のようなことが起きました。

今月初め、連休明けの月曜日は朝礼当番でした。(恥ずかしながら、連休の間、朝礼のことがずっと頭から離れませんでした。) 入社して7年になりますが、一週間に一回まわってくる朝礼当番で経営スローガンを唱和するのに詰まらないで読めたことがありませんでした。
その日も同じで、つまる気持ちを持ちながら読みました。ですが、自分が「絶対この言葉、出にくい、出ない・・・」と思っていた言葉がすんなりと出たのです。その時の「心地よさ」はなんともいえないものでした。  

それでわかったのが、「自分が外的刺激を強く受けている時の体の状態」と「リラックスして独り言を言っている時の体の状態」の違いです。吃音者は誰でもそうだと思うのですが、吃音真っ最中の時の体の状態は、心臓バクバク、呼吸は浅く(胸呼吸)乱れ、頭の中は真っ白になっているのではないでしょうか。そのような状態では非吃音者でも普通に話をすることができません。アナウンサーが「本番直前に走ってはいけない」と言われるのは呼吸の乱れを防ぐ為です。話すことを仕事とするプロのアナウンサーであってもそうなのです。

その日は外的刺激を強く受けているにも関わらず、「リラックスして独り言を言っている状態」とまでは言いませんが、それに近い状態を維持できたのです。これが先生の言われる「外的刺激を受けている中で発語調整能力を養っていく」というのはこのことだと身をもってわかりました。

それから一週間が経ち、自分の話し方が急に良くなった訳ではありませんが、心構えは確実にかわりました。と言うのも、この心地よい経験を積んでいけば吃音は必ず改善の方向に向かうという確信が持てた為に、毎日毎時のあらゆる場所が「実践の場」に変わったのです。(実践の場と思えるようになったのです。)上手く話ができれば自信につながりますし、上手く話せなかった場合落ち込むのではなく、「今のは体がどういう状態になっていただろうか。次からはこうしてみたら上手く話せるかもしれない。」と、体の状態の分析や次の対策を考えるなど、自分の考え方をプラス思考に変えることができたのです。

今までは自分の話し方が改善の方向に向かっている手応えを全く感じていなかった為に、まさに出口の見えないジャングルに迷い込んでいる心境でした。ですから結果を求める気持ちで焦ってしまい、毎日が実践の場ではなく「テストの場」になっていたのだと思います。テストとしてとらえているので上手く言えないと当然落ち込みます。落ち込むとよけい悪化する・・・。まさにこの悪循環に陥っていた訳です。今まで20年近くかけて苦しんできた吃音なのですから、「吃音を直すぞ!」と意気込んでも一週間、一ヶ月で良くなるわけがありません。焦らず時間をかけて良い発語習慣を身につけていきたいと思います。

※江田よりのコメント:
毎日毎時のあらゆる場所を安定した話し方の実践の場としているのか、それとも、上手く言えるか言えないかだけをチェックする「テストの場」としているのかは大きな意識の違いです。Nさんの「毎日毎時を実践の場」としていく意識は、あらゆる場面で自己を肯定し、実践の中で話すことの自信を深めていく健全な姿勢だと思います。



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