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吃音の治療|吃音(どもり)についての Q&A(4)

ご質問

Q.23 吃音(どもり)は治療するものですか?

A.病気やケガなどを手当てして治すことを「治療」といいますが、ここで扱う吃音は、発声器官に問題があることではありませんので、「吃音を治療する」という表現は不適切だと思います。

しかし、頭部の打撲、脳腫瘍などの脳疾患による吃音(外因性吃音)の場合は、言語聴覚士による言語治療(発声機能のリハビリ)が適応されます。また会話が成り立たないなどの重度の吃音の場合も、発声の治療ということも当てはまるかと思います。

吃音の多くは不自然な話し方を繰り返しているために、それを体が学習し覚えてしまったもの(内因性吃音、又は発達性吃音とも言います)ですから、安定した話し方がどのようなものかを感覚的にとらえ、話し方の調節習慣を実践的に身につけていくことが必要ととらえています。


Q.24 私は職場の電話応対でひどく緊張し、ことばが詰まります。社会不安障害(SAD)なのでしょうか?

緊張

A. 社会不安障害(SAD)(Social Anxiety Disorder)という病気は“人前で恥ずかしい思いをするのではないか”と過剰な心配をするために恐怖心が非常に強くなり、人の集まる場面で紅潮、発汗、震え、動悸(どうき)、下痢、腹痛、吃音といった症状が現れます。たとえば、

など、他者が自分に注意を払うとき、注意を払われていると感じるときに過度な不安を感じ、症状が出ます。

このような症状が“また起こるのではないか?”といった不安を引き起こし、人が集まる場面を避けるようになります。その結果、学業や仕事、さらに結婚などの社会生活に大きな問題を抱えてしまうことにもなります。
誰でも大勢の人の前で話をしたり、初対面の人と会う時は、緊張するものです。しかし、その緊張が異常なほどひどく、堪え難いものとなり、人前に出ることさえ苦痛になり、学校や会社を休む日々が続いているなら、社会不安障害(SAD)であるかもしれません。精神科、心療内科の医師に診てもらうのが賢明と思います。SADの場合は薬の服用と精神療法で治療が行われます。

さて、吃音と社会不安障害(SAD)との関係ですが、吃音者イコールSADであるということではないと思います。私のことばの詰まりが顕著だったのは10歳代後半、20歳代始めでしたが、社会人となった頃は電話応対、人前での発表などで大変緊張し、動悸、発汗がありました。それは発語予期不安からくるあがり症とも言えます。
SADで言う吃音は、吃音意識のない人が、人前ではことばが詰まる、声が出なくなるというようなことのようです。

レッスンを受けた方で、精神科医からSADと診断されている方がおられました。この方は吃音ではありませんが、自己紹介など、人前では一切声が出なくなるという症状でした。
SADであって、詰まり意識が部分的に重なっておられる方もおられると思います。医師の診断が必要かと思います。

Q.25 手話をしながら話す時はスルスルとことばが出て全くどもりません。なぜでしょうか。

A. 手話をしながら話す時は、手の動きがことばとなっていますので、口からの発語は補足的な感覚となります。たとえことばが詰まっても手話はそのまま続けられるという安心感がありますので、自然にことばが出やすくなるものです。

ひとりだけでの朗読では詰まってしまうのに、他の人と一緒に声を出して読むとスラスラ言えることと同じ心理です。
また、手話の話し方は日常の話し方と異なり、ゆるやかなスピードで口の形をはっきりさせますので、このことも言いやすくしていると思います。
 

Q.26 スピーチをする時、原稿を作るのとメモ程度で話すのと、どちらが良いのでしょうか。

A. スピーチといってもさまざまな場面があり、原稿を作るかメモ程度で良いかはその場の状況によると思います。
職場での会議や朝礼での打ち合わせ・伝達はメモ程度でよろしいと思います。けれど、結婚式でのスピーチ・司会、研究発表などのプリゼンテーション、講演会の司会、公の会合での挨拶スピーチなどでは、あらかじめ原稿を作ることをお勧めします。PTAでの挨拶や自己紹介なども、お話しに不安があれば原稿を作って話すことをお勧めします。

詰まる意識がありますと、あらかじめ決められた(原稿通りの)フレーズを言うことに抵抗を感じ、原稿など作らずに、とにかくその場で何とか言い換えながら逃げ切ろう(?)と考えるものです。まあ、それも対処法のひとつと言えましょうが、緊張の中でひとつ言い換えると、続いて次の言い換えのことばを捜し始め、果ては自分で何を言っているのか分からなくなる・・・ましてや聴衆には言わんとするメッセージが届かなくなり、雲に包まれる・・・そんな具合になってしまうのではないでしょうか。

公の場でのスピーチになればなるほど、ことばの精度が求められますので、原稿作成は不可欠だと思います。原稿作成は手間がかかりますが、その努力は報われるものです。
準備段階として、自分で作った文章を声を出して読み、引っかかりやすい音は前の音につなげるなどのマークをして、読み上げるというより聴衆に語りかけるイメージが描けるまでリハーサルしてください。
ちなみに私は講演会やコンサートでの司会をさせていただいておりますが、毎回必ず原稿を練ります。(紅白歌合戦の司会台本では、どの場面で何を話すかが事細かに書かれてあるのと同じです。)それにより話す内容の明確な枠組みができます。その中に当日の場でしか語れないフレーズ(ちょっとしたユーモア)を入れることができます。

以前ある婦人が、・・・その方は吃音ではありませんがスピーチに苦手意識をお持ちでした・・・、会合でノートに書いた原稿を見ながら緊張気味に発表しておられました。けれど的を得た表現と誠実に語る態度は今も私の記憶に残っています。  スピーチは苦手と思っておられる方ほど、良いスピーチをするものです。反対にスピーチが得意と思っている人ほど、原稿もなく行き当たりばったりの冗漫なことばで長々と話し、聴衆に我慢を強いて受容させてしまうことがあります。

原稿をもとにしたスピーチは話の質を高めます。そして、言い換えをして話すこととは比べ物にならない達成感、満足感そして話すことの自信をもたらすものです。ぜひトライしてください。



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